日本財団 図書館


 

関連し、過剰のエネルギー摂取にむすびつくものと推測される。また、糖分尺度得点の低い者、遺伝的健康尺度得点の高い者で、グリコヘモグロビン値が高いという結果であった。この糖分尺度が高い場合にグリコヘモグロビン値が低いという結果は、通常の考えと逆になっていた。しかし、これは健康のためには糖分摂取が低い方がよいという考え方が、疾病頻度の高い者ほど大きいためと考えられる。すなわち、糖分尺度とグリコヘモグロビン値の関係は疾病頻度との関係からも、原因を示すものではなく、病的な状態にある場合に、糖分を控えるという結果を示しているものと考えられる。
?まとめ
循環器疾患は好ましくない生活習慣によって生じるとされている。今回は都市に居住する健康な生活をめざした集団と農漁村に居住する30歳から60歳までの婦人206名を対象に、生活習慣調査を実施し、同時に血液検査を行い、両者の関係を検討した。都市と農漁村の比較、血液検査値等と生活習慣との関係を重回帰分析等を用いて検討した結果、以下の知見を得た。
(1)都市に比べ、農漁村では、高塩分尺度の平均値に有意差が認められた。また義理人情尺度・保守・中庸尺度も高く、運動の実施尺度は得点は低かった。都市では農漁村に比べ、肉・油脂、洋風の食事、教養、料理への進取性、運動の実施、社会奉仕、外向性、自発性の各尺度得点が有意に高かった。
(2)都市に比べ農漁村では、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、尿酸値、グリコヘモグロビン値が有意に高かった。HDL−コレステロールの値は、都市で有意に高かった。ただし、これらの地域での検査値の平均値は、すべて正常範囲内であった。
(3)血液検査値等を基準変数に、生活習慣を説明変数とした重回帰分析の結果、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、尿酸、グリコヘモグロビンにおいて、いくつかの食生活習慣尺度が選択された。しかし、HDL−コレステロールにおいては、食生活習慣尺度は選択されず、地域の影響が大きいことが示唆された。また、遺伝的健康観尺度が、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、グリコヘモグロビンで選択されており、健康に対する意識の重要性が示唆された。
(4)以上の結果から、循環器疾患予防のためには、疾病は生活習慣の改善等で予防が可能であるという意識を持たせるような健康教育の重要性が指摘された。
謝辞:調査に御協力いただいた東京友の会会員の方々、千葉県安房郡白浜町の住民の方々、白浜町役場保健課の方々、白浜町の和頴美和子医師、(財)ライフプランニングセンターの北川輝子氏および関係各位に深謝いたします。また論文作成まで親身なご指導、ご助言、ご校閲を下さいました東邦大学医学部公衆衛生学教室豊川裕之教授に深甚の謝意を表します。
なお、本研究の一部は文部省統計数理研究所共同研究(3−共研−72)およびWHO Medical Researth Grant(WP)MRO/IHC/HSR−001−Aの援助を得た。
文献
青柳利夫(1994):成人病のリスク・ファクターについて、臨床成人病、24(1)、12-13
日野原重明、道場信孝、柳井晴夫、他(1988):健康生活処方に関する研究−;LPC式生活習慣検査表による健康の維持・増進に関する基礎的研究−、(財)ライフプランニングセンター研究業績年報、8,61-69
吹野洋子、中村雅一、佐藤真一他(1994):農村地域の婦人の血清HDL−コレステロール値と栄養摂取状況に関する疫学的研究、日本栄養・食種学会誌、47(3)、163−177橋本修二、豊嶋英明、岡本和士、他(1988):高齢者における血清脂質濃度の地域差に及ぼす摂取栄養の影響の程度について、日本公衛誌、35(9)、493-500日野原重明、柳井晴夫、高木廣文、他(1982):循環器疾患予防のための生活習慣に関する研究(第1報)生活習慣の多変量解析による分抗日本公衛誌、29(7);309-320
日置敦巳、酒井ミユキ(1994):加齢および日常生活習慣と健康診査データとの関連、民族衛生、60(4)、202-211
本間日臣(1986):肥満の生理学、本間、古谷、丸井編、健康科学、317-320、医学書院(東京)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION